先週の説教要約 「マリアの歩み」

〇先週の説教要約  「マリアの歩み」   中道善次牧師
ルカ福音書2章1〜7節

賛美歌第二篇124番に「マリヤは歩みぬ、キリエ・エレイソン」という歌があります。
キリエ・エレイソンとは、ラテン語で「主よ、憐れみたまえ」という意味で、この歌は、少しもの悲しいメロディです。この歌が、マリアの歩みを理解するヒントになりました。
マリアがベツレヘムにヨセフと一緒に行く、その歩みは、孤独を感じるものでありました。

① マリアの孤独
マリアは、今日では世界中の人々から愛された方です。
私たちは、イエスが私たちの救い主であることを知っています。その上で、受胎告知の物語もマリアの出産の物語も読んでいます。
しかしマリアは、こんなこと誰にも打ち明けられない。そのような中での出産だったのです。
自分が救い主の母になると言うことは、人に理解してもらえるようなものではなかった。たとえ愛する婚約者のヨセフであっても、わかってもらえるはずがなかったのです。
マリアは、孤独な決断をしたのです。私たちが神を信じる時、あるいは神に従うとき、周りの家族に理解されないで、一人でクリスチャンになることがあります。またクリスチャンになってから、神に従うときにも、孤独な歩みをしなければならないことがあります。
しかし孤独なマリアの一番の理解者がいました。それが親戚のエリサベトです。
エリサベトもまた、天使が神殿で仕える夫に現れ、不思議な高齢出産に臨むところでした。
カウンセリングの学びで、エリサベトはマリアにとって、一番素晴らしいメンター(指導的な助言者)であり、先輩であり、理解者であったと学びました。
マリアは受胎告知の直後に、エリサベトの所に行き、そこで3ヶ月滞在しました。ルカ 1:39〜42と56
マリアにとって一番嬉しかった言葉が、42節の「あなたは女の中で祝福された方です」でした。
私たちも、神を信じてゆく中で孤独を経験することがあります。しかしその中で、神はあなたに理解者を傍に備えてくださるのであります。

② マリアを支えたヨセフ
神は、マリアが救い主の母になる孤独な決断を求めたのと同じように、夫ヨセフにも孤独な決断を求められたのです。それがマタイ1:18〜25に記されています。
旧約聖書によれば、婚約期間中に、別の人の関係を持ったという事がわかれば、男女とも石打ちの死刑にされてしまうのです。
ヨセフは、マリアが誰かと関係を持って妊娠したのだと疑ったことが、19節から分かります。
しかし優しいヨセフは、マリアを訴えることをしなくて、別れを告げる覚悟をしていたのです。
神は悩むヨセフに天使を遣わして、マリアのお腹の中の子どもは聖霊によるものだ。生まれてくる男の子は救い主だと言うことを伝えられたのです。
しかしこれはマリアとヨセフの二人だけが受け入れることが可能なことであり、他の人は誰も理解できなかったのです。
ヨセフは、どうして身重のマリアを連れてベツレヘムに行ったのでしょうか?
ローマ皇帝からの住民登録の命令がありましたが、ベツレヘムに住民登録に行くのは男性だけで十分だったのです。女性は行く必要はなかったのです
しかしヨセフはマリアを連れて行きました。この時マリアは妊娠8ヶ月をすぎていました。
私はずっと、マリアはロバに乗ってベツレヘムまでいたと思っていましたが、どうやらそうではなかったようです。彼らは貧しかったのでロバを持つことが出来なかった。妊娠8ヶ月のマリアが、150キロ程の距離を歩かなければならなかったのです。
何故そこまでしてマリアを連れて行ったのでしょう。
それはマリアを一人ナザレに残しておいて、自分だけベツレヘムに行くことが出来ない。マリアの妊娠を懐疑的に思っている人々から石打にされてしまうかもしれないと恐れたのです。
また婚約期間における婚前交渉にも罰が伴ったようです。今とは時代が違ったのです。人々からの冷たい視線を受けなければならなかったのです。
それはナザレに住む親戚からも同じでありました。
ナザレに住んでいた親戚がいたと思われます。彼らもまた、ベツレヘムに登録に行かなければならなかったのです。彼らの方が、マリアとヨセフよりも先にベツレヘムに到着していたはずです。しかし彼らの誰も、二人のために宿を用意していなかったのです。彼らは親戚の人々からも拒絶されていたのです。
その孤独な二人を受け入れてくれたのが、宿屋の主人です。ルカ福音書2章3〜7節です。
私たちは、イエスは馬小屋で生まれたと一般に聞いております。
しかしユダヤの文化を深く紹介するイスラエルの専門雑誌は、次のような学説を述べております。
それによりますとイエスは、おそらく地下室でお生れになられたというのです。
イスラエルでは馬が飼われることはまずなかった。家畜は通常、羊や山羊です。またイスラエルには、建築に適した木はあまり多くありません。多くが石造りの家です。木で作る建物はイスラエルでは贅沢であります。
したがって、家畜はほら穴の中にいたのです。日中は外で飼っている家畜を、夜、暖を取る為に洞穴の中に入れたのです。
当時の宿と言っても、個室はまずありません。他の宿泊客と一緒に泊まることが通常でした。
マリアとヨセフにとって、ほら穴であっても、プライバシーが保たれ、家畜がいるだけの場所の方がどんなにありがたいことだったでしょう。しかも彼らにとって、ほら穴は、ナザレにいた時に住居にしていた場所ですから、何も悪い環境ではなかったのです。
むしろ十分に配慮された環境の中で、マリアはイエスを出産したのであります。
同じように、神はあなたのためにも、配慮しておられるのです。あなたは自分がひどい環境の中に置かれていると思っているかもしれません。しかしそのような中で、神はあなたのことを一番よく考え、一番良いように配慮しておられるのです。

③ マリアを支えた主の言葉
マリアは、エリサベトから次のように言ってもらいました。
ルカ 1:42 声高らかに言った。「あなたは女の中で祝福された方です。」
しかし最初にこの言葉をかけたのはエリサベトではありません。
天使ガブリエルが、マリアに対して二度もそのように語ったのです。
ルカ 1:28 天使は、彼女のところにきて言った。「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる」。
ルカ 1:30 すると、天使は言った。「マリヤ、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。
これは、恩寵に満ちた者、英語で言うなら、you are blessed です。
マリアを支えたのは、エリサベトであり、ヨセフでした。
しかしそれ以上に強くマリアを支えたのは、「あなたは祝福されています」という神の言葉でした。