2019年11月17日の説教要約 「つぐなわれた後半生」

2019年11月17日の説教要約

                        「つぐなわれた後半生」   中道由子牧師

≪ルツは、「言われるとおりにいたします」と言い、麦打ち場に下って行き、しゅうとめに命じられたとおりにした。≫ (ルツ記3章1~18節)                         

 

 3章は、人間的には、貧しいやもめルツが地主の奥さんになるシンデレラストーリーですが、それ以上に、主は契約を守る者に慈しみを施される、という契約への変わらない真実を見ることができます。

 

1、年長者ナオミの知恵

 姑のナオミは自分のことよりも、嫁のルツの幸せのことを第一に考えていました。

大麦と小麦の収穫が終わり、その夜は打ち場で大麦の振るい分け作業が行われる。振るい分けは、通常午後4時から日没までです。この仕事は、土地所有者であるボアズが自ら行うべきものです。その作業を終えると、畑の一角にしつらえたその打ち場に寝て、大事な収穫物の番をする。他の人がいない状態です。ナオミは、ボアズが買戻しの権利のある親類であることをルツに十分説明していたのでしょう。

ナオミは二つのことを考えていました。

それは、ルツがボアズと結婚して、幸せになってくれることでした。

もう一つは、買戻しの権利のあるボアズがエリメレクの土地を買い戻してくれることです。

この二つのことは別々のことではありません。ナオミに子がなく、嫁のルツにも夫がなく、子がなければ、エリメレクの家系は絶えてしまいます。土地も他人のものになってします。そこでルツが死んだ夫の兄弟の一人と再婚するか、兄弟がいない場合は、最も近い親戚の一人と再婚すれば、生まれた子にエリメレクと名乗らせ、その家系を起こさなければならないのです。この場合、その義務がルツとエリメレク一族にあるわけです。

  ユダヤでは、土地は神様のもので、人はその土地をお預かりして管理を任されている。それは買戻しの背後にある考えです。

エリメレクには、ボアズのほかに、もっと近い親類の者が一人いました。

ナオミの計画は、ボアズがルツと結婚し、同時に土地を買い戻してくれることでした。

ナオミは、家の義務と権利を果たすべき「買戻しの権利のある者」(ゴーエール)のことを知っていました。「ゴーエール」は「買戻し」の意味と「贖い」の意味を含んでいます。ボアズがエリメレクの土地のゴーエールとなってくれたら、ルツは、夫を得て、幸せになります。そして、生まれてくる息子にエリメレクの名を継がせ、同時に土地も継がせることができる!と、ナオミは考えていました。

 

2、ルツの勇気ある求婚

  ルツはボアズに出会い、彼から好意を示されました。当然、ルツもボアズに好意をもったことでしょう。ボアズは妻を先に亡くしており、ルツとは年が離れていたと言われています。ルツは、自分に親切を尽くして多くの落穂を拾わせてくれたこの人が買戻しの権利のある親類の一人とナオミから知らされていました。ルツの決心はすでについていたと思われます。この日、ナオミから、ボアズに求婚を願うことは、大きな決断が要りました。けれども、ルツは迷わずナオミが命じたとおりにしました。

ナオミは、ルツが今夜なすべきことを細かく指示しました。

体を洗って、油を塗って晴れ着をまとって、打ち場に下って行くことです。しかし、ボアズの食事が終わるまで、気づかれないようにすること。ボアズが寝る時、その場所を見届けてから入っていき、その足のところをまくって、そこに寝ること。そのようにすれば、その人が彼女のなすべきことを教えてくれるであろう、というものでした。

このような提案は、異邦人であったルツにとっては非常にきまり悪く、恥ずかしい行為だったでしょう。しかしルツは、疑いや心配を打ち捨てて、信仰によって従います。

「マントのすそ」と訳されているヘブル語は、ルツがこの言葉を持ってボアズに求婚していることが分かります。マントのすそは、ヘブル語「カナフ」は、「翼」と同じ語です。詩篇17篇8節「瞳のようにわたしを守り、あなたの翼の陰に隠してください。」ルツはこの言葉を持って求婚しています。

すべての計画を準備したのはナオミでしたが、その結果は神の主権下にあるボアズにかかっていました。

女の身でありながらルツはボアズに結婚を迫るのですが、ルツは姑に、5節「言われるとおりにいたします。」と言いました。今日の説教の中心聖句のみ言葉です。私たちも私たちを贖ってくださった「イエス様のおっしゃることはみないたします」という信仰を持ちたいと思います。

 

3、ボアヅの快い承諾

 ボアズは大仕事を終え、飲み食いをして、気持ちがよくなると、積み重ねてある麦の端に行って寝ました。それで、ルツはこっそり行って、ボアズの足のところをまくって、そこに寝た。夜中になって、ボアズはびっくりして起きました。彼が暗闇の中で目を凝らして見ると、何と、ひとりの女が自分の足の所に寝ているのです。

9節「お前は誰だ。」ルツは彼に問われるままに、「私はあなたのはしためルツです。」と答えて、「あなたの覆いを広げて、このはしためをおおってください。あなたは買戻しの権利のある親類ですから。」と言ったのです。男性が自分の「おおい」を広げて、女性をおおうという動作は、「私はあなたと結婚します」というしるしでした。

ルツの気持ちを知ったボアズは、冷静に、理性的にルツの愛を受け止め、二人の結婚が実現することを目指して、最善を尽くそうと決意するのです。

ボアズはまず、ルツがした行為に主の祝福を祈り求めています。そして、「今あなたが示した真心(まごころ)は、今までの真心よりまさっています。」と彼女をほめたたえました。

「誠実さ」の原語は「ヘセド」。「先の真心」はルツがナオミに示した姑孝行を褒め、「後からの真心」はナオミの夫エリメレクのために子孫を残そうとすることを示しています。このことのためにルツが結婚を申し込んだとボアズは分かっています。

彼は、ルツの誠実さと信仰を大きく評価しています。彼女が貧しい者でも、富む者でも、若い男たちの後を追わなかったこと。そして、今、自分の幸せよりは、モーセの律法に従って、ナオミの夫エリメレクの名を相続地に残すために、かなり年上のボアズを夫として選んだことです。

さらにボアズは、ルツを励まして11節「わたしの娘よ、心配しなくていい。きっと、あなたが言うとおりにします。」新改訳「あなたの望むことはみな、してあげましょう。」と約束したのです。

ボアズはルツを妻として受け入れた場合、非難されたり、経済的に損をするのではないかと計算をしませんでした。かえって、律法に基づいて「買戻しの権利のある者」となってくれるように求めるルツの誠実な心に打たれ、何の弁明やためらいもなく、私は買戻しの権利がある者として責任を果たすと約束したのです。

ボアズは、ルツから自分の幸せや安定した生活を獲得するような、利害や打算を超越した恵み、「ヘセド」を見出しました。だから、自分も恵みで応えたのです。

 ボアズがルツに対して抱いた愛は、自分よりも相手の利益を求め、最後まで責任を取る愛でした。私たちを救われた神は、聖霊を通して、日々このような愛を示してくださいます。み翼の陰に私たちをおいて守り、責任をもって導いてくださいます。

 

4、事の成就を待つ

 ボアズが土地とルツを買い戻すことができるかどうかは、次の日まで待たなければなりません。

ルツは朝早く去ります。その時、ボアズは彼女が着ていた外套を広げさせ、そこに大麦6杯を量って入れ、それを持たせて、姑の所に帰らせました。彼女を姑の所に素手で返してはならないと思ったからです。ボアズの決意は、このようなナオミに対する「おみやげ」で表されています。

ルツから一部始終を聞いたナオミは、ボアズの考えを理解し、ルツにこのことがどうおさまるかわかるまで待つように勧めました。

すべての話を聞いたナオミは、ボアズが必ず約束を守ってくれると信じ、気をもまず、じっと神の導きを待つことにします。ボアズに求婚したことまでは人間の領域ですが、事の成就は神によるということを信じていたからです。

私たちはすぐに物事が自分の思った通りに進まない時にどうすべきでしょうか?

創造主のみわざを待ちつつ従う時、神様の助けの御手を待ち臨みましょう。